戦術

ロングスローの多用がサッカーをつまらなくする2つの理由

強豪チームがロングスローを一つの武器にして高校選手権で優勝して以来、高校サッカーでもロングスローを多発するチームが全国的に増えているのでしょうか?

ロングスローを投げられる選手がいるのなら、「武器を使わない手はない」と監督さんは言われるでしょう。しかし明かな格下相手に、試合開始直後からロングスローを連発する試合を見て、ウンザリしました。

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得点の匂いがぷんぷん。マイナスのクロスを狙うべき理由

「決定力不足」に悩んでシュート練習に励むより、「チャンスの質の向上」を目指した方が効率がいい場合があります。

 

「チャンスの質」とは、得点の匂いがするかどうか、シュートが簡単かどうかと言い換えることができます。

 

かつて、クライフ氏が「相手ペナルティアリア内のゴールライン上(下図の黄色)からのマイナスのクロスは、得点の可能性が高い」と言ったそうですが、相手陣内を深くエグった状態からのクロスは、得点の期待が大きく膨らむ瞬間。守備側にとってはとっても「ヤバい」瞬間です。

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ラインを「上げろっ!」の意図を解説(二)~問題のスペースが見えますか?

なぜコーチはラインを「上げろっ!」と叫ぶのか?
前回の記事でラインを上げて、相手を下げるため、と紹介しました。

 

今回もサッカー経験のないお父さんお母さんを対象に、ラインを上げて「コンパクトにする」を紹介します。

 

お子さんの試合の観戦力を上げて、「今日の相手はコンパクトだったねー」と親子でサッカーっぽい会話ができるように役立てていただければ幸いです。

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ラインを「上げろっ!」の意図を解説|お子さんのサッカーの試合の観戦力を上げる(一)

サッカー経験がなく、サッカーの試合を見るのは小5のお子さんの試合と、たまにテレビの日本代表戦のみというお父さんから質問をいただきました。

 

「息子のチームのコーチが試合中によく「上げろっ!」って言います。あれはどういう意図なのでしょうか?」

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ディフェンスの基本 マンツーマン併用型 ジュニア8人制の場合

実在するジュニアチームのディフェンスについて紹介します。
王道のゾーンディフェンスではなく、「ボールより前をマンツーマン」という方法ですので賛否が分かれるかもしれません。

 

こちらの8人制の場合のビルドアップ編もご覧ください。

 

 

1-2-4-1を採用した場合で考えます。

 

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最終ラインで数的優位「1」を作る

相手がワントップの場合

CBの二人で相手のワントップに対応します。

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相手がツートップの場合

CBの二人に加え、MFの一人が下がり目のポジションを取って数的優位を確保します。

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ビルドアップに対するディフェンス

相手がディフェンスラインからビルドアップを試みる場合、まずトップがプレスにいきます。

 

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ボールより後ろと逆サイド以外をマンツーマンでマーク

 

この時、最終ラインでは数的優位「1」を確保したまま、ボールより前の相手に対してマンツーマンになるようポジションを取ります。
「ボールより後ろ」と「逆サイド」の相手はとりあえずフリーにしておきます。

 

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トップの役割と注意点

 

  • トップのディフェンスはボールを奪うことではなく、方向を限定することが目的

 

今の場合、GKからパスを受けたCBがGKにパスを返せないようにします。

トップがこのようにプレスにいってしまうと、CBからGK、CBからCBへ簡単につながれて(サイドを変えられて)しまいます。

 
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サイドを変えられてしまうと、全体がスライドしなければならず、チームのエネルギーを消耗します。

 

 

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そのため、トップは「ボールを奪う」より「サイドを変えられない」ことを優先します。

 

 

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サイドを限定することで、黄色のスペースを徐々に狭くしてボールを奪うと明確に意思統一しましょう。

 

 

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相手センターバックがドリブルでボールを運んだ場合

 

トップが「サイドを変えられないディフェンス」をすると、センターバックがドリブルを始め、トップは後ろから追いかける形が多くなります。

前進するセンターバックに対して、左MFが寄せ、戻ってくるトップと挟みます。

 

 

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左MFの注意点

 

  • 自分のマークへのパスコースを切りながらプレスにいく
  • ボールを奪うことより、ドリブルする相手に縦に抜かれないことを優先する
  • トップが戻る時間を稼ぐ

 

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相手チームのビルドアップ能力が高いと、パスコースを切られた選手は動き直してパスコースを作るはずです(1)。

 

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この場合は右MFが自分のマークへのパスコースを切りながら、フリーになった相手にプレスにいきます(2)。
この状態になれば、高い確率でボールを奪えるはずです。

 

 

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サイドを変えられてしまった場合

 

トップがこのボールを追いかけてしまっては消耗が激しいので、右MFが前に出ます。
トップは再びサイドを変えられないような(GKとCBの両方にプレスにいける)ポジションを取ります。

 

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右MFは縦に抜かれないディフェンスをします。
同時に「ボールより前」がマンツーマンになるよう全体がスライドします。

 

「逆サイド」と「ボールより後ろ」はフリーで構いません。

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最終ラインでは数的優位を確保したままです。
もし最終ラインで数的同数になってしまうと、1対1の状態では、裏への長いパス1本で危険な状態になってしまいます。

センターバックが攻撃の起点に! ビルドアップ第二段階 ジュニア8人制の場合

実在するU12(小学6年生)を担当するコーチが、選手に実際に伝えた内容を教えていただきます。
ここではビルドアップの第二段階で前進する方法をいくつか紹介します。

 

初めての方はます「センターバックがフレーになれ!」からご覧ください。

 

センターバックがフリーになった状態からスタート

 

下図はビルドアップの第一段階でセンターバックがフリーになった状態です。ここからビルドアップ第二段階が始まります。

 

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1.相手の背後のスペースを狙う

 

センターバックが前を向いて、フリーの状態なので、何でもできます。
まずは、相手ディフェンスラインの背後のスペースを見ます。

 

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トップが動き出して、ディフェンスと1対1の状態であれば、1本のパス(できるだけグラウンダー)で裏を取ります。

 

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あるいは、トップの動き出しをおとりにして、逆サイドの選手へ。

 

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ディフェンスの背後を狙うパスを出してはいけない場合

パスの受け手が動き出してない場合

 

あくまでパスの受け手が動き出し、パスを要求するのが先。

 

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パスの受け手が明らかにオフサイドポジションにいる場合

 

オフサイドポジションにいるパスの受け手が悪いが、この場合、センターバックはフリーの状態でボールを保持しているので、味方がオフサイドポジションにいることまでしっかり把握しなければいけません。

 

 

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2.相手中盤の背後を狙う

 

ディフェンスラインの背後へのパスが難しい場合、相手中盤ラインの背後を狙います。

 

 

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相手のサイドがセンターバックにプレスに来ました。トップが縦パスを受けるために下ります。相手ディフェンスがしっかりトップについてきました。

 

 

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マークされた状態で縦パスを受けたトップは、無理に前を向く必要はありません。しっかり止めて、フリーになったサイドへ落とせば十分です。

 

 

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相手の中央の選手がプレスに来た場合も同じようにトップが下りて縦パスを受け、

 

 

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右MFに落とします。

 

 

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3.センターバックのドライブ(運ぶドリブル)を使う

 

フリーになった状態のセンターバックに対して、相手が構えてプレスがない場合、ドライブが非常に有効です。

 

 

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センターバックは相手を引き付けて、より有利になった味方を使うことをイメージしながら運ぶことが大切です。
(相手を抜こうとしてはいけません。この状態でボールを失ったら大ピンチです)

 

 

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センターバックが前進することによってパスコースが変化するので、周囲の選手は細かくポジションを修正してパスコースを作り続けます。
この状態であれば、黄色のポジションにいる3人にショートパスをつなぐことができます。

 

 

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センターバックが前進した場合の注意点

 

センターバックが前進しているので、ディフェンスが足りません。MFが一人下りて、センターバックのポジションに入り、相手トップと2対1の状態を作っておきます。

 

 

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逆サイドでの駆け引き

 

マイボールなので逆サイドも攻撃に参加します。高いポジションを取ることによって、相手サイドを押し下げます。

 

 

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センターバックがフリーになれ! ジュニア8人制の場合のビルドアップ

8人制でのビルドアップの方法を紹介します。
センターバッグがフリーになってボールを保持することで、非常に有利な状況で攻撃の起点となることができます。

 

*実録です。
Tiki-Takaスタイルを志向するコーチが、実在するチームのU12の選手にどのように説明しているか、教えていただきました。チームはごく普通のクラブチームで、この学年は「たまに見栄えはいいサッカーをするが、弱い」とのことです。

 

基本は1-2-4-1

 

1-2-4-1の並びを基本とします。
便宜上、相手チームも1-2-4-1として説明します。

 

8人制のポジションについて、どういう名称が一般的か分かりませんので、このチームでの呼び方を採用。
センターバック、ミッドフィルダー、両サイド、トップ、GKとなります。

 

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GK、ディフェンスラインからビルドアップを志向するので、頻繁にこういう状況なります。

 

この局面のように1-2-1プラス1の形を作ることが理想的。
プラス1(ここでは左CB)は、ボール保持者の斜め後ろに絶対安全なパスコースを作ります。

 

 

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軽めのプレスを受けた右CBが左CBにパス(1)。
全体をスライドさせます。

 

【左CBの注意点】

  • 右CBとの距離が近いと、相手のプレスを早く受ける
  • 右CBとの距離が遠いと、パスミス、トラップミスの可能性が高まる

 

【GKの注意点】

  • 左CBがボールを受けた時点で、GKが「プラス1」のポジション(絶対安全な斜め後ろ)を取る

 

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左CBは前方を見ながらボールを少し前に運んで、

 

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相手ディフェンスの三角形の中にポジションを取る右MFに縦パス(2)。右MFから右CBにパス(3)。

 

【右MFの注意点】

  • 立ち止まってボールを受けるのではなく、三角形の真ん中に入ってきて受けるイメージ。
  • ボールを受ける前に、三角形から出る(逃げる)ルートを確認しておく。
  • 右CBへのパスをダイレクトにするとそれだけ不確実になるため、一度止めてから確実につなぐことを意識する(技術レベルが高ければ、この場面ではダイレクト推奨)

 

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これで右CBがフリーに。
実際のピッチでは、下図で受ける印象より「フリー」になれます。

 

 

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相手が強めのプレスをかけてくる場合

 

同じ状況から始めて、別のパターンも紹介します。

 

 

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右CBから左CBへパス(1)。全体をスライド。
先程上手くつながれたので、今度は相手トップがセンターバックに強めにプレスをかけてきました。

 

 

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パスを受けた左CBは左サイドにパス(2)。
相手トップは引き続きボールを追います。

 

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トップの頑張りによって、ハマったようにも見えますが、

 

 

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左サイドは大きなギャップに顔を出した右CBにパス(3)。

 

【左CBの注意点】

  • 左CBは斜め後ろのポジションを取ります。
  • ただ、このポジションはギャップを広げるための「おとり」です。他に選択肢があれば、ここにパスを出すのはいい判断とは言えません。
  • 仕方なくこの左CBにパスした場合、左CBは大きく蹴り出した方が無難でしょう。

 

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右CBは再びフリーに。

 

 

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次回はフリーになったCBからの攻撃方法を紹介します。

サイド攻撃で引いた相手を崩す方法|現代サッカーの教科書より

サイド攻撃という名のクロス攻撃

 

日本代表。シンガポール戦、カンボジア戦と引いた相手を崩せず、見苦しいサッカーをしてしまいました。

引いてブロックを作る相手に対しては、監督はもちろん、テレビの解説者も「サイド攻撃」が重要だと言います。

しかし、この2試合の日本代表のサイド攻撃は「クロス攻撃」でした。

 

 

例えば攻撃参加したサイドバッグが、相手と1対1の状態になり、なんとかかわしてクロス(センタリング)。こんなイメージです。

 

 

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しかし、ゴール前はこの状態です・・・

 

 

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このクロスでは、ディフェンスにとって有利な条件が多く、

 

  • ゴール前で大人数で待ち構えている
  • この状態であればクリアするだけなので、技術は必要ない
  • 待ち構えるディフェンスにとって、ボールが入ってくるタイミングが分かりやすい
  • クロスの距離が長く、ディフェンスは準備する時間がある

攻撃側にとっては簡単な状況ではありません。

 

  • クロス(キック)の精度が必要
  • クロスに合わせるシュートの難易度が高い

 

いくらヘディングの岡崎選手がいても、得点の匂いがしません。むしろ、クロスのタイミングで「やめてくれ~」と言いたくなります。

 

もちろん、こうした形からの得点はたくさんありますが、もし「現代サッカーの教科書」という教科書があれば、その最新版に掲載されているのは、次のようなサイド攻撃です。

 

現代サッカーの教科書|サイド攻撃編

 

ディフェンス(白)は、しっかりブロックを作った状態。「美しい」と言いたくなるようなディフェンスラインです。

 

 

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右サイドでボールを持つ赤10はドリブルが得意な選手ですが、さすがにこの状態では無理です。

 

大外に開き、走りだす赤18に大きなサイドチェンジとなるパスを送ります。

 

 

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ディフェンス陣(白)はサイドチェンジに対してスライド。

 

 

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パスを受けた赤18は寄ってきた赤11に折り返し。すでにペナルティエリアの中なので、ディフェンスはボール(赤11)に終結。

 

 

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赤11は無理してゴールに向かわず、ボールをキープ。相手を3人引きつけたことにより、(ゴール前にしては)大きなスペースができました。

 

 

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赤11からスペースに走り込んだ赤8にパス。
この時点でディフェンス4人が置き去りになってます。「ヤバい」って叫んでるかもしれません。

 

まじヤバいです。

 

赤8はファーストタッチからドリブル。ゴール前にいたセンターバッグが慌てて寄せます。

 

 

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センターバッグが赤8に寄せたことで、ゴール正面にスペースが出現。

 

このスペースを埋めなければいけない白の選手が、ボールウォッチャーになってしまってます。

 

 

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開いたスペースに入った赤4に、赤8からマイナスのボール。
遅れたディフェンスが寄せてますが、赤4は簡単にダイレクトでシュート。ゴール。

 

 

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この得点、チャンピオンズリーグ決勝(2014-15)のバルサの先制点を例に、教科書の「サイド攻撃」の章にこのように書いてあってもおかしくありません。

 

  • 引いてブロックを作られたら、サイドチェンジでブロックの外を使う
  • ディフェンスをスライドさせて、ディフェンス間を広げる
  • ペナルティエリア外からの浮玉クロスより、ペナルティエリア内、ゴールライン付近からのグラウンダーのマイナスのクロスを狙う(シュートが簡単になる)

 

高校生でも知ってることですが、日本代表もできてません。

 

また、この得点にスーパーなプレーは絡んでません。
日本代表クラスの選手であれば問題なくできるプレーではないでしょうか。

 

しかし、同じサイド攻撃でもカンボジア戦の日本代表のサイド攻撃は、教科書とは全く異なるものでした。

(主にカンボジア戦での感想です。その後のアフガニスタン戦では有効なサイド攻撃が見られました)

高校サッカーと現代サッカーで180度異なる動きとは?

 

高校サッカー(高校選手権)と現代サッカー。
ある場面での同じポジションの選手の動きが180度異なっていました。

  • GKへのバックパス
  • ルーズボールがGKに転がった時
  • 相手のロングボールをGKが処理した時

 

こうした時の、センターバックが動く方向が正反対でした。
 

現代サッカーのセンターバック

現代サッカーにおいて、センターバックが「引いて、開く」動きは、ある程度ポゼッションを志向するチームではビルドアップ時の「テンプレート」になってます。

 

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「ポゼッションなんて何の意味ない」と言いそうなMr.モウリーニョのチェルシーでも、今シーズンは数多く見られる動きです。

 

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高校選手権でのセンターバック

では、高校選手権ではどうでしょうか?
GKにバックパスした後(そもそもGKへのバックパスは極端に少ないので、ほとんどはGKがルーズボールを処理する場面)、

 
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センターバックは「前進」します。
テレビで4試合見ただけですが、全体的な傾向と言って間違いないと思います。

 

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高校サッカーではGKからのビルドアップを試みてません。その気配も感じられませんでした。
以下、簡単に「テンプレート」だけ紹介します。
GKからのビルドアップは、相手FWのプレスが1人なら、CB2人(GKを含めて3人)でボールを失わない絶対安全な距離でポジションをとります。

 

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相手FWのプレスが2人なら、CBは大きく開いて、MFの1人が降り、3対2(GKを含めて4対2)で作ります。

 
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アジアカップでの長谷部選手のポジショニングを見ると、日本代表もテンプレートを採用したことがわかります。

ただ、長谷部選手のポジションが低すぎて、数的優位すぎる(図では3対0)場面が多く、その分、中盤で数的不利になっている場面が目立ちました。

 

 

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こうした「テンプレート」に対しては対策もできており、いつまで有効かはわかりませんが、代表チームも採用するテンプレートを、高校選手権で見られなかったことは残念です。