電車に乗っている所をイメージしてみてください。
手荷物は棚の上に置きます。両手は空いてますが、吊り革にはつかまりません。
電車が動き出すとガタっと大きく動きます。その時はまず足で踏ん張りますよね。
しばらくすると揺れは安定するものの、時々小さく揺れます。
この時、態勢を保とうとして、身体のどこが一番最初に動くでしょうか?
足ではありません。集中して感じ取ってみると、まずお腹がピクっと動くことが分かります。その最初に動いている筋肉がインナーマッスルです。
電車よりもっとわかりやすいのは、このようなバランスボードです。乗るだけでインナーマッスルにガッツリ効きそうではないですか?
しかしインナーマッスルという筋肉はありません。背骨周辺にあるいくつかの筋肉の総称として使われます。インナーマッスルには別名がたくさんあって、「ローカル筋」「深層筋」「姿勢保持筋」とも呼ばれます。
インナーマッスルは体幹と同じように扱われることが多いのですが、体幹は頭と手足以外の胴体部分のことですので、インナーマッスルは体幹にある筋肉の一部です。
インナーマッスルの名称、役割、鍛える効果、アウターマッスルとの違い、よくある勘違い、トレーニングの注意点等など、後半で詳しくお伝えします。まずは、どのようなトレーニング方法が効果があるか見てみましょう。気軽にお試しください。
ドローインは体幹トレーニングの代表的なメニューですが、イラストや写真ではただ寝っ転がっているだけに見えるため、「よく分からない」という方も多いようです。
一言で要約すると「お腹をへこませながら呼吸」するトレーニングです。トレーニングというより、ちょっとしたコツを覚えて、「呼吸」という動きを利用してインナーマッスルに働きかけます。
ドローインは色々な姿勢でできますが、ここでは仰向けに寝て行う方法を紹介します。
お腹の真ん中ではなく、左右に手を当てておくと、お腹の動きがよく分かります。
ドローインができないと、体幹トレーニングの効果が半減するという専門家もいるくらいです。ドローインについてはこちらに詳細な解説しましたので参考にしてください。
ドローインの効果と正しいやり方
初級編は普段スポーツやトレーニングをほとんどしていない方向けの基礎トレーニングです。まずは前述のドローインをしっかり習得しましょう。
背中が真っすぐなるよう注意しましょう。下図はプランクの良くない姿勢です。
インナーマッスルを鍛えるトレーニングは、基本、地味~なトレーニングです。インナーマッスルを刺激する効果のあるツールを活用して気分転換しましょう。
バランスボードは乗るだけ(バランスを保つだけ)で、インナーマッスルを刺激することができます。電車の例で紹介したように、バランスを保とうとするとまずお腹まわり、インナーマッスルが動きます。
常に不安定なバランスボードに乗って、たくさんの刺激をインナーマッスルに送りましょう。
バランスボードは簡単に乗れそうに見えますが、実はなかなか難しいです。 自信がない方にはバランスパッドをおすすめします。こちらは座布団を2枚重ねた上でバランスを取るような感覚に近いです。
ここまでが初級編です。1回に全てトレーニングする必要はありません。また回数やセット数を増やすことより、続けられる自分流のやり方を見つけてください。
もっと負荷が必要になったら、中級編に進みましょう。
これも体幹トレーニングではよく見る姿勢ですね。インナーマッスルを腰痛予防・改善で鍛えられる方は、まずハンドニーからお試しください。
アウターマッスルのトレーニングになりますが、腹筋もしておきましょう。
さらに、2kgから4kgくらいの重さのメディシンボールを持って上体を捻ってみましょう。
ハンドニー(中級編1-1)よりやや負荷を高めてみましょう。
バランスボードの上に手を置いて、腕立ての姿勢をとります。支持面が不安定になる分、負荷が高まります。
さらに負荷を高める場合は、ひじではなく、手と足の外側でバランスを取り、同じように手と足を上げ、左右対称の姿勢をつくります。
もし職場環境が許されるのであれば、椅子をバランスボールに変えましょう。最初はなかなか落ち着けませんが、慣れると背筋も伸びて気持ちも引き締まって、仕事の効率も上がるかもしれません。
チューブを使って大きな筋肉に頼らず、関節の動きを意識してトレーニングしてみましょう。関節の周辺にあるインナーマッスルも刺激されます。
四肢、関節を支えるインナーマッスルを鍛えることで、安定性が増し、ケガを予防できます。
サーフィンやスノボーのオフトレーニングに活用されるバランスボードPRO。これでがっつりインナーマッスルが鍛えられます。
将来のアスリートを目指すにしても、スパルタではなく、「遊び」で運動能力を高めましょう。バランスストーンでバランス感覚を磨きをかけましょう。
バランスボールは手軽な価格で人気ですが、本格的に体幹トレーニングに取り組むなら、ボディバランスドームがおすすめです。なぜなら、バランスボールより幅広いメニューでトレーニングできるからです。
例えば、バランスボールの上ではスクワットは危なくてできませんが、ボディバランスドームでのスクワットで、体がプルプル震えて、インナーマッスルが鍛えられます。
インナーマッスルや体幹トレーニングについて調べると、定義がハッキリしない用語や違う意味で使わる単語がたくさん出てきます。この辺が非常に分かりにくいので、少し用語の整理をしましょう。
体幹トレーニングのついての書籍12冊、雑誌6冊、webサイト多数を調べて一番分かりやすかった「体が生まれ変わる「ローカル筋」トレーニング」を参考にさせていただきます。
体幹とは、全身から頭、手、足を除いた胴体を指します。ですので「体幹筋」と言えば、胴体にある筋肉となります。しかし実際には「体幹を鍛える」=「胴体にある筋肉を鍛える」という使い方をする人はすくないはず。
「体幹を鍛える」と言いたい人は、「体幹深層筋を鍛える」という意味で使っています。体幹深層筋とは、体幹の奥にある筋肉、すなわち「インナーマッスル」になります。
しかし、インナーマッスルという名の筋肉はありません。腹横筋や多裂筋をまとめてインナーマッスルと呼びます。
つまり、「インナーマッスル≒体幹深層筋≒体幹」と非常に大雑把に解釈すれば、話は簡単になります。
身体の表面近くにある筋肉がアウターマッスル、奥にある筋肉がインナーマッスルです。アウターマッスルはインナーマッスルより太くて長くて強い筋肉。 アウターマッスルは触れることができ、インナーマッスルは触れることができないとも言えます。
そのため、自分のインナーマッスルが十分発達しているのかどうか、見た目では分かりません。
インナーマッスルは体の奥深くにあることから別名「体幹深層筋」「ローカル筋」とも呼ばれます。
また骨盤と背骨周辺にあるインナーマッスルは身体の姿勢に影響を与えるため、「姿勢保持筋」という別名まであります。
一方のアウターマッスルは「体幹浅層筋」「グローバル筋」とも呼ばれます。
インナーマッスルは「ローカル筋」とも呼ばれると書きましたが、厳密には少し違うようです。インナーマッスルは体の奥深くにある筋肉。それに対してローカル筋は「背骨に直接付着している筋肉」のこと。代表的なのが、腹横筋、多裂筋、大腰筋などです。
ローカル筋の対語は「グローバル筋」。背骨に付着していない筋肉を指します。
ですので、体幹トレーニングで鍛える筋肉の核心は「ローカル筋」と言えそうです。ただし、一般的には浸透しておらず、月間の検索数を見ると「インナーマッスル」が22,000回に対して「ローカル筋」は70回しかありません。知名度に圧倒的な差があるため、インナーマッスル≒体幹と捉えた方が無難でしょう。
さらに、体幹トレーニングを説明する際に「インナーユニット」「アウターユニット」という分け方もあります。
インナーユニットは腹横筋、多裂筋、内腹斜筋、多裂筋のこと。なのでほぼローカル筋と同じ意味。
アウターユニットは腹直筋、外腹斜筋、広背筋。ただし明確な定義はありません。
このインナーユニット、アウターユニットを合わせて「コア」といいます。一般的に「体幹を鍛える」とはこのコア、すなわち、インナーユニット、アウターユニットにある7つの筋肉を鍛えると言ってもいいと思いますが、どうでしょうか?
アウターマッスルはロボットのような、体の大きな動きをつくる筋肉。一方のインナーマッスルは、微妙な関節の動きをサポートし、(2018年現在)ロボットにはできない体の動きのスムーズさ、しなやかさをつくる筋肉です。
スポーツ競技のパフォーマンスを向上させる上でも、日常生活を向上させる上でも。インナーマッスルを鍛えると幅広いメリットがあります。
砲丸投げ、槍投げなどの投擲競技、野球、ゴルフ、テニスなどでは、動きの土台となる体の安定が重要。インナーマッスルを鍛えることで土台がしっかりするので、フォームが安定し、競技力が高まります。
サッカー、ラグビーなどコンタクトプレーが多い競技では外からの衝撃、圧力に対応することが重要になります。接触プレーで体がブレない、ブレたとしても相手より早くリカバリーすることで、有利な立場に立てます。
インナーマッスル(≒ローカル筋)は意識しないと日常生活の動きの中ではあまり使われません。
背骨に直接付着している筋肉がローカル筋と説明しましたが、このローカル筋が背骨を支える大きな役割を果たしています。
この筋肉が衰えると、背骨を支えるという本来の役割を果たせず、腰痛の原因になります。
また、高齢になるとよろけたり、転びやすくなるのは、腹横筋などのローカル筋が衰えていることも大きく関係しています。そのため、ローカル筋のを消えることは転倒防止につながります。
お腹が出てくる原因が、インナーマッスルの筋力不足だと、一生懸命腹筋運動をしても効果は少ないでしょう。
お腹まわりにインナーマッスル、腹横筋、横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群をインナーユニットと呼びます。この筋力が落ちると、腹圧が落ちて内臓の重みに耐えられなくなり、下腹が出てきてしまいます。
そのため、インナーユニットを鍛えると、天然のコルセットのようになり、下腹がスッキリします。
インナーマッスルを鍛えると姿勢が良くなります。インナーマッスルには「姿勢保持筋」という別名があるくらい、姿勢との関係が深いです。
「小学生の姿勢が良くなる体幹トレーニング」によれば、授業中に頬づえをついたり、足を組んで集中できない子供が増えているのは、筋力の低下が大きな原因だとしています。
その筋力とは、特に体幹にあるインナーマッスルのことで、このインナーマッスルを体幹トレーニングで鍛えるという切り口でトレーニング方法を紹介しています。
インナーマッスルを鍛えるトレーニングでは、腹横筋の緊張と弛緩を繰り返します。そのため、腸のが刺激されて便秘が改善しやすくなる効果があるそうです。
また、骨盤底筋群が衰えが尿失禁の原因となります。この骨盤底筋群は腹横筋と連動して収縮するため、尿失禁の改善に役立ちます。
(出典: 金岡恒治・小泉圭介「体が生まれ変わる「ローカル筋」トレーニング」マキノ出版)
インナーマッスルも筋トレ同様、鍛えたい箇所に意識を集中し、ゆっくり確実な動作を心がけます。
インナーマッスルはアウターマッスルより意識しにくいのでエクササイズはゆっくり行いましょう。
深い呼吸をするとインナーマッスル(腹横筋や骨盤底筋群)も呼吸を助けます。息を吸う時には腹腔が緩み、息を吐く時には腹腔が力んで胸郭を押し上げます。
そのため、トレーニングする際は深い呼吸を心がけると、インナーマッスルが動きやすくなり、効果が高くなります。
トレーニング以外の日常生活でも、呼吸を深くするだけで、インナーマッスルへの刺激になります。
特に道具を使わず、自重体幹トレーニングでは、負荷が少ない分、姿勢(フォーム)に集中します。姿勢が崩れていると、インナーマッスルが刺激されず、トレーニングの効果が落ちるので注意してください。
インナーマッスルのトレーニングは、一度のトレーニングで反復回数を増やさず、トレーニングの頻度を上げた方が効果的。
「腕立て」のように目標回数を決めてそこを目指すのではなく、1セッションあたり10-20回として、セッションの回数を増やしましょう。
「インナーマッスルを鍛える」ことに限って言えば、高い負荷は不要。なぜなら負荷が強いと、アウターマッスルが働いてしまい、インナーマッスルのトレーニングにならないからです。
胸郭を動かし呼吸を補助する呼吸筋。収縮すると胸郭を引き上げて広げる。胸郭が広がると中に収められている肺も拡張して内圧が下がり、外から肺へ空気が入りやすくなる。
大胸筋に隠れている。肩甲骨を動かす上で大事な役割を果たす。肋骨に始まり肩甲骨の鳥口突起に終わる。
胸郭を動かし呼吸を補助する呼吸筋。 外肋間筋の内側でクロスするように走っている。収縮すると胸郭を引き上げて狭めて、肺を圧迫して内圧を高め、肺から外へ空気が出やすいようにする。
骨盤の上縁から肋骨と腰椎にむかって延びる。腰椎を横へ曲げる側屈が主な働き。
脊柱(胸椎と腰椎)、骨盤、大腿骨をつなぎ、上半身と下半身を連携させる。骨盤から大腿骨に延びる腸骨筋、脊柱から大腿骨に延びる大腰筋からなる。
脊柱に沿って走っている脊柱起立筋群の深層にある、胸椎と腰椎に付着している筋肉。 他の筋肉と協力して脊柱の伸展と側屈に関わる。
腹腔を構成し、腹圧を高める。腹腔の天井で胸郭の底。横隔膜が縮んで下がると胸郭が広がって息が吸いやすくなる。緩むと上がって胸郭が狭まり、息が吐きやすい。
腹腔を構成し、腹圧を高める。腹腔の背中側を支える。脊柱を作る椎骨同士をつなぐ。脊柱を伸ばす伸展、横に傾ける側屈、回す回旋に関わる。
腹腔を構成し、腹圧を高める。腹腔の前面から側面までコルセットのようにカバーする。腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋からなる腹筋群で一番深い位置にある。体幹の屈曲、側屈、回旋に関わる。
腹腔を構成し腹圧を高める。腹腔の底を支える。骨盤の底でハンモック状に広がり、骨盤に収めた内臓を支える。
ローテーターカフを作る4大筋肉の一つ。肩関節の外転させる役割を担う。
ローテーターカフを作る4大筋肉の一つ。肩関節の外旋(上腕を外側に回す動き)と水平伸展を担う。
脊柱と肩甲骨をつないでいる筋肉。肩甲骨を後ろに引く役割を担う。
ローテーターカフを作る4大筋肉の一つ。肩関節の外旋・内転を担う。
ローテーターカフを作る4大筋肉の一つ。肩甲骨の前面を走る。肩関節の内旋と水平屈曲を担う。
頸部の筋肉のうち、頸椎に沿うように前方にある。頸部を前屈させる役割を担う。
頚堆と後頭骨正中よりの間をつなぐ筋肉。頭を前方に曲げる役割を担う。
参考: Wikipedia