速く走る走り方のポイント解説|親子で「公式」覚えて速く走ろう!

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「なんかバランス悪いんだよなぁ」

お子さんの走り方を見ながらそう感じたことはありませんか?

「フォームを直せばもっと速く走れそうな気がするけど。」 「それにもっとカッコよく見えるのに」
走ることは全ての運動、スポーツの基本です。

もしお子さんが今より速く走れるようになれば、どういう変化があるでしょうか?
例えばチーム内で平均的なスピードのサッカー選手の場合。
速く走れるようになれば、試合でもっと活躍して、イキイキと喜ぶ姿がイメージできますよね。

その喜びが、次の成長への糧になるはずです。

また運動に苦手意識を持っているお子さんが、ちょっとしたコツを覚え、速く走れるようになることは、立派な人生の成功体験です。他の運動やスポーツに興味を持ち、“やってみたい”というチャレンジ精神が芽生えるでしょう。

では速く走る方法を、わが子にどうやってアドバイスすればいいでしょうか?
もちろんあなたが速く走れなくても問題ありません。

まずあなたが正しい走り方、正しいフォームを理解し、お子さんに教えてあげることです。
そして時間を作って一緒に楽しんで練習し、その結果(変化)を共有しましょう。

では、ちょっとした公式を覚えることから始めてみましょう。

1 「速く走る」公式

1-1 「速く走る」公式は「足の回転数」x「歩幅」

速く走るための公式は、「足の回転数」x「歩幅」です。
人間が走る以上、ウサイン・ボルト選手でも、あなたのお子さんでも同じ公式があてはまります。

足の回転数(=ピッチ)は、1秒間の歩数。1秒間に何歩足が前に出るか。歩幅(=ストライド)は1歩の距離。この2つの掛け算によって走るスピードが決まります。

この速く走るための「公式」を理解せずにトレーニングすると、効率が悪くなってしまいがち。まずは速く走るためのポイントをしっかり押さえてください。

では具体的に公式を使って少し計算してみましょう。

A君とB君は小学5年生の男子です。
A君の足の回数数(ピッチ)は4回、歩幅(ストライド)は1.4m

これでA君は1秒に5.6m前に進みます。

一方で回転数(ピッチ)が3.9回、歩幅(ストライド)が1.38mB君。

B君は1秒に5.38m前に進みますが、A君と一緒に走ると1秒につき約0.22m遅れてしまいます。

A君とB君の差は、回転数(ピッチ)が0.1回、歩幅(ストライド)が2cmとほんのわずかです。

しかし、もしこの二人が運動会で同じ組に入って競争すると、見た目には結構な差(おそらく1-1.5m)がついてしまうでしょう。(スタートダッシュの良し悪しなどの条件は無視します)

A君 B君
回転数(ピッチ) 4.0 3.9
歩幅(スライド) 1.4m 1.38m
1秒間に進む距離 5.6m 5.38.m

(上記の子どものピッチとストライドについては「小学生陸上競技大会100m走の検討」という埼玉大学教育学部2007年の論文を参考にしました。)

ですので、あなたのお子さんが早く走れるようになるには、「足をできるだけ早く回転させて、1歩の幅をできるだけ大きく!」とアドバイスすればいいわけです。

と言ってしまえば簡単ですが・・・もちろん、このアドバイスだけで速く走れるようになる子はいません。
速く走るには、足の回転数を上げる方法、歩幅を広げる方法を知って、できるようにならなければいけません。

そのために、公式をもう少し詳しくみてみましょう。

速く走る公式

 

1-2 まずは歩幅を大きくすることから始めましょう

実は、速く走りたいお子さんが取り組むべきことは決まっています。
回転数(ピッチ)を上げることではなく、歩幅(ストライド)を大きくすることです。

なぜなら、回転数(ピッチ)を大きく上げることはできないからです。上がらないわけではありませんが、効率が悪いのです。

人間の走り方には限界があり、大人でも子供でも、回転数は1秒に45回が限界です。
ちなみに、世界最高タイムを記録した時のウサイン・ボルト選手のピッチが4.8回。

もしごく普通の人のピッチが4.2回でボルト選手との差がわずかに感じられたとしも、それ以上ピッチを上げてボルト選手に近づくのは至難の業です。それは大人も子供も同じ。回転数を0.1上げることは非常に難しいのです。

一方の歩幅(ストライド)は大きく伸ばすことができます。
もし歩幅(ストライド)を少し大きくすることに成功したらどうなるか、先ほどのA君とB君の例でみてみましょう。

B君がお父さんからのアドバイスを得て、努力した結果、歩幅を5cm伸ばすことができたとしましょう。結果はこのように変わります。

【B君の歩幅改善後】

A君 B君
回転数(ピッチ) 4.0 3.9(変化なし)
歩幅(スライド) 1.4m 1.43m(+5cm
1秒間に進む距離 5.6m 5.57m

歩幅を5cm伸ばすだけで、1秒間に進む距離でほぼ差がなくなりました。
ただし、ただ1歩を大きくすればいいわけではありません。

実際に1歩の歩幅を最大限大きくして歩いてみてください。最大限です。
すると、当然「かかと」から着地してしまいますよね?その走り方では、回転数が落ちてしまいます。

上の表の通り、回転数は以前と同じでなければいけません。(もちろん、回転数も上がれば、もっと速くなります)
すなわち、「速く走る走り方」とは、「足の回転数を落とさずに、歩幅を最大限広げる走り方」です。

どうすればそんな走り方ができるようになるのでしょうか?
ポイントは「基本の姿勢を保ち、反発力を上手に使えるようになる」ことです。

歩幅を少しだけ大きくしよう

2 速く走る走り方のコツは「基本の姿勢」と「反発力」

2-1 基本の姿勢

速く走るには、速く走るための姿勢で走っているかが、とても重要です。
速く走るための姿勢とは、体の軸を真っすぐに立てた状態、体を一本の棒のようにした状態です。

基本の姿勢ができると、地面からの反発力を上手に利用できるようになります。

【基本の姿勢の作り方】

  • 足を肩幅に開き、両手を大きく上にあげ、つま先立ちして全身を伸ばします。
  • ゆっくり手を下ろします。
  • 頭が上にひっぱられているようなイメージで。
  • 足先(親指の付け根あたり)に体重がかかるように。

この姿勢をいつも意識します。運動会で走る前には、直前にこの姿勢をとってからスタートしましょう。
詳しくは後述しますが、「基本の姿勢」⇒「よーい」「どん」の流れでスタートします。

【基本の姿勢チェックリスト】

  • あごをやや引いて目線は前に
  • お腹の引っ込める
  • お尻を引き締める
  • ひざは伸ばす
  • 背筋を伸ばす

2-2 反発力を利用する

中学の理科で習った「作用・反作用の法則」を覚えていますか?
壁を手で押したら、押した力の分だけ壁から返ってくるというアレです。なぜ壁から力が返ってくるのかいまだに理解できませんが、とにかく力は返ってきます。

アクションリアクション

この法則を上手く利用することが、早く走るための、大きなポイントになります。

例えばよくある走り方の練習として、「もも上げ」がありますね。
ももを上げることにばかり注意しがちですが、本当は「下げる」時が大切です
(上げた足でペットボトルを勢いよく踏みつぶすような足の下げた方です)。

なぜなら、足をおろして地面に着いた時の力が、走るための力(反発力)になるからです。この反発力を得るには、地面に力を与えなければいけません。

地面に与える力が大きければ、反発力も大きくなります。地面に与える力が小さければ、小さい反発力しか返ってきません。
ここから反発力をどのように走る力に変えるのか、具体的なトレーニングも交えて紹介します。

3 速く走るためのトレーニング

3-1 片足上げ(おろし)

まず、基本の姿勢を取ります。
こんなの誰でもできると思って、適当にならないように。基本の姿勢で手を抜きがちですが、しっかり姿勢をとりましょう。体を棒にします。

基本の姿勢から片足を上げ、垂直に足を下ろして、地面に力を加えます。
足は垂直に下ろしますので前には進みません。

お子さんに説明する前に、是非ご自分でこの動きをやってください。足を垂直に下ろして、地面に強い力を伝えるのは、なかなか難しいはずです。

どうでしょうか?下ろした足が地面に当たる瞬間に、軸足が伸びて、力を抜いてしまいませんか?
地面に加える力が弱くなれば、反発力(走る力)も弱くなってしまいますから、力が抜けるのはいい状態ではありません。

足元にペットボトルを置いて、下ろした足で踏みつぶすイメージでやってみましょう。
左右の足で、“ドン”と強く踏み込めるようになるまで練習してください。

3-2 ウォールプッシュ

次に足の指(特に親指と人さし指)で地面を押す感覚をつかみます。
地面を押すことで、反発力を「前」方向に変えるイメージです。反発力を前方向に変えることができれば、一番の目的である「歩幅」が大きくなります。

ウォールプッシュ

体(足裏)で覚えるくらいまで練習しましょう。

ウォールプッシュはお父さんがお子さんとスキンシップを取るチャンスでもありますw
一人で練習するにはウォールプッシュで。横にお父さんが見ているのであればタオルを腰に巻いて、後ろか引っ張ってあげましょう。

お父さんとウォールプッシュ

次はうでの使い方を練習します。

3-4 うでふり

速く走るためには、正しい腕の使い方も重要です。間違った「うでふり」のフォームを改善するだけでも速く走れるようになるでしょう。
しかし、うでの振り方が悪影響を与えている走り方は、特に子供に多くみられます。

速く走るために、うでのふりが果たす役割は2つあります。

  1. うでを体の後ろの引く力によって、同じ足が前に出る力をサポートします。もしうでを後ろに引かれなければ、足が前に出る力は減少してしまいます。
  2. 正しいうでのふりがなければ、背骨と肩が無駄に動いてしまいます。

実際に体感していただきたいのですが、うでふりを使わず数メートル走ってみましょう。すると、何となく骨盤が左右に回転するように感じられると思います。
これでは前に進むはずのエネルギーが分散してしまい、速く走ることはできません。

【正しいうでふりのポイント】

  • ひじは90度に
  • 体の前で、体のやや内側にくるように
  • 肩の力を抜く
  • 指は軽く握る(強く握らない)

 

【正しいうでふりのイメージ】

正しいうでふりのイメージ

【間違ったうでふりのイメージ】

間違ったうで振りのイメージ

以上が速く走る走り方の基本中の基本です。
まずは足の回転数を落とさず、歩幅を5cm 広げることを目標にトレーニングしてください。

******

「そうかもしれない。でもうちの子にはもう練習する時間がない。だって運動会は来週だ!」
そういう方もご安心ください。

次は、速く走るために、今すぐできることを紹介します。

4 速く走るために今すぐできること3つ

 

4-1 とりあえずスタートダッシュを改善する

【スタートの軸足の決め方】

いいスタートダッシュができれば、勢いを中盤以降につなげることができます。
スタートの姿勢は「よーい」の合図の時点で左右どちらの足を前に出すか、そこから始まります。しかし、この基本ができていない(知らない)子どもは多い。

両足を揃えて立ち、体を前に倒していきます。
すると転倒しないよう、左右どちらかの足が自然に前に出ます。出た足の反対足が、スタート時の軸足です。

スタートの軸足の決め方

【スタートの姿勢の作り方】

あごをひき、背筋を伸ばします。

あごを引いて背筋を伸ばす

『位置について』で両ひざに手をつきます。背筋は伸ばしたまま。

背筋は伸ばしたまま

『よーい』で軸足の反対足を引きます。軸足に重心をかけ、引いた足のかかとは軽く浮かせます。

足を引いて

 

『ドン!』で軸足の指で地面を強く押す。軸足からの反発力で、反対足で前に飛び出す。

軸足の反発力で前に

このスタートダッシュができれば、今よりは確実に速く走れるでしょう。
運動会に向けて短い時間しか練習できない場合、「位置について」「よーい」「どん」と実際に声をかけてあげてのスタートの練習が効率的です。

4-2 とりあえず「うでふり」だけ覚える

スタートの練習が終わって、まだ時間があれば、正しい「うでふり」を覚えましょう。
足と、うでの動きと、どっちが速く走るために必要かと問われれば、足です。

しかし足の動きを短時間の練習で詰め込もうとすると、かえって混乱する恐れがあります。そこで、目前に迫った運動会に向けてのトレーニングとしては、「正しいうでのふり」だけでもいいでしょう。

4-3 シューズに頼る

さらに、すぐできることとして、「速く走るためのシューズ」に頼ってみてもいいですよね。

【バネ入り?シューズ】

一番のおすすめは、靴底に「バネ」を入れたシューズです。
バネの力によって「地面を踏み込むときにパワーを蓄積し、蹴りだすと同時に推進力に変える」と商品説明にあります。

これは速く走るための重要なポイント、「反発力を前方向への力に変える」と同じことですね。
確かに靴底にバネがあれば、自然に歩幅が大きくなる可能性は高く、(回転数が落ちなければ)シューズの力によって速くなると言えそうです。

「月星 バネのちから」

【コーナーで転ばないシューズ】

トラックのコーナーで走りやすいように、ソール部分が左右対称になってます。速く走るためのシューズとしては「定番」ですが、50m走、100m走は直線の場合がほとんどです。徒競走ではなく、リレー向きのシューズかもしれません。

アキレス 駿足

速く走るためにすぐできること

5 親子で一緒に練習する際の注意点

最後に、親子で一緒に練習する前に、確認していただきたいことがあります。

5-1 親の押し付けになってませんか?

お子さんは本当に「速く走りたい」と思っているでしょうか?
速く走れれば、スポーツで活躍できる可能性は高くなります。学年で一番速く走れるようになれば、人気者になれるかもしれません。

速く走れるようになることで、マイナスとなる要素は見つかりません。しかし、お子さんの成長にとって「必須」ではありません。

もしお子さんがあなたの顔色を見て、練習に取り組んでいるのであれば、幸せな時間にはならないでしょう。
まず親の願望が強すぎないか、押し付けになっていないか。お子さんの表情を見て再度確認しましょう。

 

5-2 無理なトレーニングになってませんか?

実際に50m100mを走り、タイムを計ってみることもあるでしょう。その場合、何本も走っても恐らく記録は伸びません。もし記録を取るのであれば、1回の練習につき2本が限度ではないでしょうか?無理なトレーニングにはケガがつきものです。

トレーニング前の準備運動はもちろん、負荷を高めすぎないよう注意してください。

5-2 速く走る本当の目的

速く走りたいと思っているお子さんにとって、練習の目的は「速く走る」ことです。しかし、大人はもう一段上から見守ることが大切です。

一生懸命練習しても、思うような結果が得られるとは限りません。
結果が出なかったからといって、取り組んだ練習が無駄になるわけでは全くありません。次の課題を見つけ、再び解決する努力ができるよう、大人がサポートしましょう。

その努力が、自然と子どもの成長につながるはずです。

まとめ

まずは公式を覚えよう!

  • 速く走るための走り方を身につけるには、まず公式を覚えてください
  • 練習によって足の回転数を上げることは難しいため、歩幅を伸ばす練習に集中します
  • 基本の姿勢をしっかりとりましょう
  • 反発力を前方向に向けるコツがポイントです
  • 「うでのふり」の改善は足の使い方を改善するより簡単です

 

参考図書

  • 子どもの足がどんどん速くなる!(主婦の友インフォス情報社)
  • どんどん子どもの足が速くなる!(河井書房社)
  • Ultimate Speed & Agility(CrewPress)
  • 姿勢がよくなる 小学生の体幹トレーニング(ベースボール・マガジン社)

 

(更新日):2018年05月30日 (作成日):2018年05月30日